
ハナノヒト
※花の村がお世話になっている地域の方を取り上げるコーナーです。
石州嶋田窯
嶋田孝之(たかゆき)さん
嶋田健太郎(けんたろう)さん
嶋田瑠晟(りゅうせい)さん
今回は、江津市後地町にある『石州嶋田窯』さんを訪問しました。現在は3代目窯主の孝之さん、そして4代目健太郎さん、5代目瑠晟さんの3世代で伝統陶芸品を作り続けています。
現在は、注文生産が多く、さまざまなお店に卸され、特にマグカップが人気で注文が絶えず、取材当日も焼成前の製品がたくさん並び、粘土の香りが漂っていました。
「窯4つ分がたまったら焼く」と話すように、今も登り窯を使い続けている窯元です。昭和10年に開窯され、初代は『水がめ』を作り、2代目から民芸陶器を手がけ今に至っているそうです。
みなさんに家業を継がれた思いをたずねました。
3代目の孝之さんは「25歳で継いで今年77歳だから52年。半世紀になるなぁ」としみじみと語られました。4代目健太郎さんは「よく聞かれるけど、ただ家がやっていたから。小さい時からずっと見てきたけぇ、できるようになっただけ」と飾らない言葉で語ります。5代目瑠晟さんも父の言葉を聞き、横でうなずいていました。お二人ともがそれぞれの作陶する父親の姿を見て育ち、尊敬の念をお持ちと感じました。その様子を見て孝之さんは「継いどるんか〜?」と冗談交じりに息子、孫の言葉に顔をほころばせていました。
地域でも人気だった毎年5月の大イベント『登り窯まつり』では、20年くらい続けてきた嶋田窯の皿で手打ち蕎麦を振る舞うイベントがとても好評で、お客さんはそれを機会に気に入った皿を買って帰られていたそうです。
しかし、コロナ禍を機にやむなく中止。それでも、「今後も丁寧な作業に集中し、いいものを質を落とさず、注文に応じていきたい」という言葉から、献身的な姿勢が感じられました。
毎年、あさりこども園・さくらこども園の年長児が『絵付け体験教室』でお世話になり、15年が経ちます。素焼きの茶碗に筆で絵を描き、窯で焼き、それが卒園の贈り物になっています。
「大概の子は塗りつぶしになってしまうけぇなぁ」と微笑ましく語る健太郎さん。子どもたちは、釉薬でツヤツヤに仕上がった自分のお茶碗に目を輝かせます。偶然、まちで20歳になった子と出会い、「まだ使っています」と聞いたときは、とても嬉しかったと話されました。
粘土は工房裏の小高い山から採取。瑠晟さんは「子どもの頃はこの山で鬼ごっこをして遊んでいた」と懐かしそうに振り返ります。「最初はサイドテーブルなど大きなものを作ることから始めたけれど、途中で崩れるなど苦労が多かった。今では何でも作れるようになった」と成長を実感されている様子が伝わりました。
「あくまでも発信はお客さん。わしらが作ったものを気に入って使ってくれる人がいる。それでいいんだ」と取材の終わりに言いきられた孝之さん。ここ江東地区に、伝統工芸を受け継がれていく嶋田窯。一意専心でおられる素晴らしい窯元です。